ソラネコの何か(仮)

徒然電脳妄想ブログ

ガミラスとイスカンダル

なんちゃってイラストレーター、彷徨えるトランスジェンダー、ソラネコです、こんにちわ、初めての人は初めまして…。

前回に続いて宇宙戦艦ヤマトの世界に突入することにする。以下の論述は、宇宙戦艦ヤマトという夢から続いているものである。

 

ヤマトのイスカンダルまでの旅には大日本帝国が犯した罪を償うという意味がある。戦争行為の反省と大日本帝国軍のネガティブ思想との戦いということについては既に述べた。だが、それだけではない。大日本帝国が犯した最大の罪、それは多くの罪なきユダヤ人たちを苦しめ死に追いやったヒトラー率いるナチスドイツと同盟を組んだことだ! たとえ日本がユダヤ人の虐殺に直接加担していなかったとしても、責任を免れることはできない。

目の前の悪事を見ながら、それを糾弾せず、見てみぬふりをするのは、自らがその罪を犯しているのと変わらない。まして目の前の悪事を糾弾できる立場と力がありながら、それをしないのでは卑怯者と呼ばれても仕方がない。だとすれば、贖罪の旅に出た宇宙戦艦ヤマトにとって、ヒトラーとナチスドイツこそ戦う相手として相応しいではないか。

西崎氏や松本氏の言い訳に反して、デスラーは無論のこと、ヒス、ドメル、ゲール等、実在するナチスドイツの関係者の名前を捩ったキャラクターが存在するのはガミラスがナチスドイツのアレゴリーになっているからなのである。

 

整理すると、ガミラスはナチスドイツ、大日本帝国軍という、2つの仮面をかぶっている。もちろんナチスドイツが表の仮面で、大日本帝国軍が裏の仮面だ。あるいはガミラス人が大日本帝国軍という仮面を、ガミラス軍がナチスドイツという仮面を被っているという言い方もできるかもしれない。

ロケット技術の研究も、それを応用した武器としての弾道ミサイルも、ジェット戦闘機も、原爆の研究も、ヒトラー率いるドイツ第三帝国が世界に先んじていた。V2ミサイルがロンドンを襲った時、市民には何が起こったのか、全く理解できなかった。ドイツ帝国の軍事技術は、そのくらい進んでいたということだ。ジェット戦闘機の実用化も第三帝国が最初に成し遂げた。もしも第三帝国の優位がもう少し続いていたとしたら原爆も実用化していたかもしれない。

さて、我々の物語の帝国は大小マゼラン星雲を征服し、更に我らが銀河系にまで魔の手を伸ばし、着々と侵略を進めている。彼らの軍事技術は圧倒的で、少なくとも『元祖ヤマト』の世界にはガミラス軍に対抗できる軍隊は、どこの惑星国家のものだろうと登場しない。『2199』でも事情は変わらない。こちらには『さらば宇宙戦艦ヤマト』からのフィードバックと思われるガトランティス軍の宇宙艦隊が出てくるが、これもドメル艦隊に対して、まったく歯が立たない。

もちろん、黄金期のローマ帝国も周囲の国々がかなわないほどの技術大国であり、また軍事大国でもあった。だが、そもそも戦争行為を反省しなければならない現代の日本には、ローマ帝国の悪事に加担したという歴史的事実はなく、彼らと戦わなければならない必然性がない。宇宙戦艦ヤマトが行わなければならない贖罪ということを考えれば、ヤマトが戦う相手はナチスドイツしかありえない。

だが、ガミラスには、もうひとつ、隠されていて表面からは見えない3つ目の仮面がある。それは日本に原爆を落としたアメリカという仮面である。もちろん遊星爆弾が原爆を表している。

 

アメリカ人が憎い、アメリカという国はアメリカ人ごと地上から消滅して欲しいとまで思っている人は多くはないだろう。だがアメリカに対して「原爆投下はやりすぎだった」と公式に謝罪して欲しいと思っている人は少なくないはずだ。

もちろん現代の日本はアメリカの同盟国であり、アメリカと戦わなければならない理由などないように思える。それにアメリカはナチスドイツと戦ったのであり、宇宙戦艦ヤマトにとって、本来であれば手を携えるべき相手のはずである―にも関わらず、何故ガミラスはアメリカという仮面を密かに被っているのか。それは原爆を落とされたことに対する悲しみと憎しみのためである。既に太平洋戦争は終わった。今更アメリカと戦おうなど愚の骨頂だ。そう、頭では確かに解っている。だからといって感情のほうは「はい、そうですか。解りました」とすぐに納得できるものではない。その納得できないという思いが3つ目の仮面に表れているのである。

だが、仮面を被っているのはガミラスだけではない。イスカンダルもまた仮面を被っているのである。軍国主義を一掃し、日本に民主主義と自由をもたらしたアメリカという仮面を。

 

ガミラスとイスカンダルは二連惑星、要するに双子の惑星である。お伽話では双子も含めて二人の人物が主役になるときは、片方が善玉で、もう一方が悪玉、あるいは片方が積極的で、もう一方が消極的、あるいは片方が男で、もう一方が女―というように、対立するものを象徴している。そしてここにあるのは日本人の見たアメリカの「良い面」と「悪い面」だ。

アメリカは日本に原爆を落とし、被曝後遺症という呪いをかけた。そしてその一方で、軍国主義を廃し民主主義と自由を与えてくれた。政府を批判しただけで逮捕されたり、投獄されたり、死刑になったりする国と較べれば、現代の日本に住む我々には、はるかに自由がある。そしてアメリカは様々な文化を伝えてくれた。我々はアメリカに対し、まさしく両極端なアンビバレントな感情を持っている。

 

さて、双子星の仮面について述べたわけだが、イスカンダルとガミラスがアメリカの「良い面」と「悪い面」を象徴しているというのは、あくまでも顕在意識、自我意識が見ているものでしかない。無意識、潜在意識は、それとはまったく違うものを見ている。

イスカンダルがアメリカの「良い面」を象徴しているというのは、ほとんどの人が了解できると思われるが、イスカンダルと対立するガミラスの場合はどうか。単純に「悪いもの」として断定することができるだろうか。ガミラスは日本人にとっての「悪いアメリカ」を象徴している。それは間違いない。だが、それにしてはやけに光に満ちているようにも感じられる。ボクもそうなのだが、ヤマトのファンの中には「デスラー総統万歳!大ガミラスに栄光あれ!」が口癖のようになっている人も少なくないと思われる。何故、我々はデスラー総統に惹かれるのか。何故、ガミラスに魅力を感じるのか。

―というわけで、See You Next Talk!